カリフォルニア・ミッション その1

カリフォルニア・ミッション その1

カリフォルニア州の北はソノマから南はサンディエゴまで点在しているのが、スペインの植民地時代に建てられた伝道所。かつて、スペインのカトリック教会による伝道活動の一環として、1769〜1823年の間に21カ所にミッションが建てられた。それらは総称して「カリフォルニア・ミッション」と呼ばれている。

ミッションは先住民にキリスト教を広め、ヨーロッパの生活を伝えるために建てられたもの。敷地内には礼拝堂のほか、宿泊棟や病棟、牧場、学校などの施設が備えられ、人々はここで生活を営んでいたという。カリフォルニアの歴史を語るうえでは欠かせない施設だ。

カリフォルニア・ミッションは今もなお、キリスト教の人々はもちろん、観光客にとっても巡礼の地となっている。ここでは南のサンディエゴから順に、数回に分けて各ミッションを紹介していく。

1.ミッション・サンディエゴ・デ・アルカラ

サンディエゴの郊外に位置するミッション・サンディエゴ・デ・アルカラ(Mission San Diego de Alcala)は、21のカリフォルニア・ミッションのなかでもっとも古い教会。1769年に設立されたこの教会は、アメリカ西海岸のキリスト教発祥の場所として「Mother of the Mission」とも呼ばれている。

一時は軍の施設として使われていた時代もあり、1931年に再建されるまでは廃墟のようになっていたという。礼拝堂は白壁に木造の窓と、いたってシンプルな造り。

礼拝堂から中庭に行くと、この教会の見どころの一つである3段に並ぶ5つの鐘がある。このうちの一つは、設立時からあるオリジナルのものだそうだ。毎日正午と6時になると、一番下の左側にある鐘が鳴らされる。また、年に一度の教会の誕生日には、五つすべての鐘が鳴らされるのだそう。

 

2.ミッション・サンルイス・レイ・デ・フランシア

ロサンゼルスとサンディエゴの間、オーシャンサイドという町にあるのが、ミッション・サンルイス・レイ・デ・フランシア(Mission San Luis Rey de Francia) 。ここは、1798年に21のミッションのうち18番目に設立されたミッションだ。

このミッションの名前は、フランスのルイ9世の名前から付けられたという。ルイ9世はスペイン人の血を引く母を持ち、死後はカトリック教会より列聖されてサン・ルイ(Saint Louis)とも呼ばれたのだそう。そのため、このミッションは「King of the Missions」という別名もつけられている。

今現在は56エーカーほどの広さだが、かつては95万エーカーと、カリフォルニア・ミッションのなかでも最大規模の広さを誇っていた。ここにはアメリカ先住民が3000人ほど暮らしていたのだそう。

礼拝堂の壁には色鮮やかな模様が描かれており、かつての様子が今もそのままに残されている。敷地内には、このミッションの歴史を綴る貴重な資料も数多く展示されている。

Advertisement

3.ミッション・サンファン・カピストラノ

ロサンゼルスから1時間ほどのオレンジ・カウンティ内にあるミッション・サンファン・カピストラノ(Mission San Juan Capistrano)は、21のミッションのうち7番目として1776年に設立された教会。ここはカリフォルニアの歴史を伝えるランドマークとして、州内をはじめアメリカ中から多くの観光客を迎えている。

スペインの植民地拡大のために設立されたこの教会は、アメリカ先住民への布教活動のための学びと訓練の場として重要な役割を果たした。徐々に発展していったこのミッションは、設立からおよそ30年で住民は1000人以上となり、農業による繁栄を極めていった。

しかし、1812年に起きた大地震でミッションは崩壊。崩れかけた当時の教会建築は今もそのままの姿で残されており、地震による惨劇を物語っている。敷地内には、当時の暮らしを示す各部屋の再現展示やパネル展示などがあり、先住民とキリスト教の発展について詳しく学ぶことが可能だ。

また、このミッションはツバメのホームとしても知られている。毎年3月になると、ツバメの群れがアルゼンチンから海を越えて、ここまで渡ってくるのだそう。敷地内にはずっと昔に作られたツバメの巣が今でも見られるほか、ツバメをモチーフとしたみやげ物なども販売されている。

サンファン・カピストラノ教会の周辺はオールドタウンとして今も栄えており、みやげ物店やカフェ、雑貨店などが軒を連ねている。また、この辺りはワイナリーも有名で、地元のワインを味わえるレストランなどもあるので、教会見学が終わったら町なかを散策してみよう。