クスコ、マチュピチュの中間にある「インカの聖なる谷」がすごい!
- 2019.11.25
- ペルー/Peru
マチュピチュは誰もが知る有名な遺跡だが、その道中でぜひ立ち寄って欲しいのが「インカの聖なる谷」。クスコとマチュピチュの中間地点、ウルバンバからオリャンタイタンボにかけて広がる5000メートル級の山々に囲まれた谷だ。その名が示す通り、かつてインカ帝国が繁栄していた時代に中枢を成した遺跡や村が、この一帯に点々と残されている。
ウルバンバとオリャンタイタンボは標高が約2800メートルとクスコ(3400メートル)よりも低い。また、オリャンタイタンボはマチュピチュへ向かう列車の発着地にもなっている町だ。これらの理由から、この2つの町は宿泊施設やレストランも多く、マチュピチュへ行く人やクスコへ帰る人が高山病対策として滞在する中継地点となっている。
インカの聖なる谷に点在する遺跡群は距離が近く、1日あればめぐることができるだろう。これらの遺跡に立ち寄ってインカの歴史を知れば、より一層その魅力を感じられるはず。
山間に潜む広大な塩の棚田
マラス塩田
マラスという小さな村から車で15分ほど行くと、山深い大自然の中に突如として真っ白な棚田が出現する。インカ帝国が築かれるさらに前、プレ・インカの時代から続くといわれる塩田だ。一帯に湧く塩分濃度20%以上の鉱泉を棚田に溜めて日干しすることで、ミネラル豊富な天然塩を生産している。
その棚田の数はおよそ2350枚。目の前に広がる幾重にも重なる棚田は圧巻だ。見学は通年可能だが、4〜9月の乾季には陽の光を反射して白く輝く美しい光景が見られる。塩田で造られた塩は入口付近の売店で購入が可能なので、おみやげにおすすめ。
インカ時代の円形農場
モライ
ここにはかつて農業試験場として使われたと考えられている、階段状になった円形の遺跡が4つ現存している。段々畑は円の中央へいくに連れて掘り下げられており、まるでヨーロッパの円形闘技場のようだ。
もっとも大きい遺跡は外側の円の直径が約100メートル、深さも100メートル。段々畑の地表面から最深部までは温度差が5〜10度もあり、この温度差を利用して種類の異なる作物を実験的に育てていたと考えられている。緻密に作られた円形農場の美しさからは、当時の人々の知恵深さがうかがえる。
聖なる谷の中心に位置する大遺跡
オリャンタイタンボ
「タンボ」とは、ケチュア語(インカの公用語)で旅籠を意味する。町の背後にそびえる山の斜面には、インカ時代の要塞だったと考えられている巨大な遺跡が今もその姿を残している。記録によると、1536年にスペインから来た征服者たちをインカ軍がこの地で容易に撃退したのだとか。
山の斜面には段々畑が広がり、その頂点にはみごとな石組みの建物や広場がある。6つの巨石が並べられた建物跡は神殿の造りかけと考えられており、その1枚の壁にはチチカカ湖畔にあるティワナク遺跡で見られる模様と同じジグザグの菱形模様がある。この急斜面にどうやって巨石を運び上げたのかなど、遺跡には多くの謎が残っている。
遺跡の麓に広がるオリャンタイタンボの村では、インカ時代に使われていた灌漑用水路や下水道が今も使われている。村は入り組んだ細い路地が網の目状に広がっており、のんびり散策すると、ペルーの住人になったような気分を味わえる。
オリャンタイタンボにはマチュピチュ行きの列車の停車駅があるため、村にはホステルやカフェ、レストラン、みやげ物店などが多数あり、道中の宿泊地点としておすすめ。
まだまだある、聖なる谷の遺跡群
ピサック、チェンチェーロ
ピサックには、丘の上に隠れた大きな遺跡がある。段々畑や太陽の神殿、見張り台など、その細かい造りはマチュピチュのミニチュア版のよう。また、この村で見逃せないのが、毎週日曜に開催される民芸品市。アルパカの毛で作った服やアンデスの織物、雑貨や小物など、地元の民芸品がずらりと並ぶ。ほかでは手に入らない一点物が見つかるかも!
チェンチェーロもかつては重要な要塞があった場所だが、現在はその礎と段々畑だけが残っており、今はその側に教会が建っている。村にはインカ時代から続く水路があり、今も住民の大切な水場だ。チェンチェーロの村でも、毎週日曜に観光客向けの民芸品市が開かれる。
遺跡をめぐるには周遊チケットが必要
マラスの塩田以外はすべて、周遊チケットを買わなければ入場することができない。周遊チケットには4種類あり、クスコ市内と近郊施設を含め16施設の入場券が合わさったフルチケット(130ソル)から、そのうち4施設のみをめぐる周遊チケット(70ソル)まで。
ピサック、チェンチェーロ、モライ、オリャンタイタンボの4遺跡のみをめぐるのであれば、70ソルのチケットを購入しよう。クスコで博物館や周辺の遺跡をめぐる場合は、フルチケットがおすすめ。
インカの聖なる谷をめぐる方法
聖なる谷の遺跡をめぐる方法はいくつかあるので、旅の行程に合わせて決めよう。
クスコを拠点にめぐる場合
日帰りツアーに参加するのがベスト。ガイドはすべて英語になるが、バスですべてのスポットに連れて行ってくれるので安心だ。クスコから個人でめぐることもできなくはないが、計画的なスケジュールを立てる必要があり、慣れない人にはレベルが高いかも。
ウルバンバ、オリャンタイタンボを拠点にめぐる場合
個人でめぐることが可能。タクシーの運転手にお願いすれば、行きたい遺跡をすべてめぐってくれるだろう。料金は100〜150ソルほど。コレクティーボ(乗り合いタクシー)でめぐることも可能だが、各遺跡でタイミングが合わずに待ち時間が出る可能性がある。
クスコからウルバンバへは、コレクティーボで約1時間半(6ソル)、オリャンタイタンボへは約2時間(12ソル)。オリャンタイタンボへはコレクティーボのほか、バス(20ソル)やタクシー(80ソル)なども便利だ。
クスコ〜マチュピチュの途上でめぐる場合
朝一にクスコを出発し、まずはコレクティーボでウルバンバへ。ウルバンバのバスターミナルで下車すると、タクシー乗り場がある。運転手に立ち寄りたい遺跡と、最終目的地がオリャンタイタンボであることを伝えよう。
各遺跡に立ち寄りながらオリャンタイタンボまでは、4〜5時間。オリャンタイタンボの遺跡見学と村散策は、2時間ほどあれば回れる。夕方に出発するマチュピチュ行きの列車のチケットを取っておけば、その日のうちにマチュピチュの麓の村までたどり着くことができるだろう。
古代文明のロマンが感じられるインカの聖なる谷。計画的にスケジュールを組んで、インカの世界にどっぷり浸ろう!
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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