塩の柱がそびえる不思議な塩湖「モノ湖」
- 2017.11.04
- Travel アメリカ/America カリフォルニア/California
カリフォルニア州の中部、ネバダ州との境目にある円形の湖、モノ湖(Mono Lake)。実はここ、塩分濃度がきわめて高いいわゆる塩湖だ。北アメリカでもっとも古い湖のひとつとされ、周辺にはいくつもの塩の柱がそびえている。その光景は何とも言えない不思議な様子で、魔界への入口のよう。
この辺り一帯は、ユタ州まで広がる大きな盆地の西側の端に位置する。この盆地に流れる川は海へたどり着くことなく、モノ湖をはじめとする周辺の湖へと流れ着く。川は何千年もかけて少しずつ塩やミネラルを湖へと運び、その結果、モノ湖は海の2倍以上の塩分濃度になったのだそう。
この湖を特徴づける大きな要因のひとつが、トゥファ(Tufa)と呼ばれる石灰岩の柱。大きなものでは2メートル以上の高さのものもある。これらの柱はもともと、湖の水面下で形作られたものだ。
炭酸塩を多く含んだこの湖にはカルシウムが豊富な真水が湧き出ており、その炭酸とカルシウムが反応して塩の堆積物が形成される。この工程が繰り返されることで堆積物が徐々に成長し、巨大な柱へと化していく。現在の光景は、気温の上昇で水位が下がったことによりあちこちに立つ柱が湖面に現れたもの。
塩分濃度が高いため生き物が少ないのかと思いきや、この辺りには植物や動物が多く生息している。湖にはバクテリアや藻類、アルテミアと呼ばれる小さな節足動物などが棲み、それを食べにさまざまな鳥が集まる。周辺には昆虫類も多く生息するため、それを狙うネズミやシマリス、さらにそれを狙うコヨーテやオスプレーなど、食物連鎖が形成されている。
湖の周辺には、高い塩分濃度に適応できる植物が多数生えている。もとは現在よりももっと大きかったモノ湖は何年もかけて蒸発していき、今の大きさまで縮小した。そのため、湖周辺の土にはまだ塩分が多く含まれている。実際に歩いてみると、湖に近づくにつれて生息する植物の種類が変わっていくのが分かるだろう。塩分濃度が高くなるにつれて、その環境に適応できる植物も変わっていく。その証拠に、塩分濃度の高い湖岸に生えた植物は、よく見ると全体が塩の結晶で覆われている。
アメリカの19世紀の小説家であるマーク・トウェインは、モノ湖を「カリフォルニアの死海」と評した。塩みやアルカリ水に適応した植物や動物に富み、豊かな水辺の生活を形成するこの一帯の環境はまさに砂漠のオアシスといえるだろう。
全景を眺められるビュースポットが、モノ湖の西側のUS-395を北へ少し上ったところにある。案内板が立っており、モノ湖を回る際のポイントも確認できるので、まずはここを訪れてみよう。
Tufaを見るなら湖の南側にあるSouth Tufa Areaがおすすめ。ここではモノ湖の歴史やTufaの成り立ちなどが詳しく学べる。トレイルを進むと周囲の植物の間には塩の塊が現れはじめ、さらに奥へ進むと湖畔にたどり着く。ここには数えきれない無数のTufaがそびえ、まるで異世界に迷い込んだかのような不思議な光景。
おすすめの時間帯は日の入り頃。赤く染まった空が湖面に映り、辺りはより幻想的な雰囲気に包まれる。この美しい光景を捕らえようと、多くのカメラマンが撮影スポットを見つけてもっとも美しい瞬間を待ち構えるほどだ。
また、日の出の時間帯もおすすめ。風が少ないため、Tufaが湖面に逆さに映り込む景色は一見の価値がある。
時間に余裕があれば、South Tufa Areaから道しるべが立っているトレイルを歩いてNavy Beachにも行ってみよう。ここにはあまり人がいないので、穏やかな岸辺で青い湖をゆったり眺められること間違いなし。
BishopからUS-395を北へ約100キロ。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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