長野県の一棟貸し古民家宿「nagare」が素敵すぎる
- 2021.10.28
- 長野/Nagano
長野県の伊那谷エリアに「nagare(ながれ)」という一棟貸し古民家宿がある。駒ヶ根市から車で10分ほど南に下ったのどかな田園風景が広がる飯島町の、一角にポツンと佇む宿だ。
都会と田舎、日常と非日常。その間を漂う時の「ながれ」に身をゆだねて、ここだけの時間を過ごしてほしいとの想いから名付けられたこの宿は、訪れる人すべてがふと立ち止まり自分と向き合える静かな時間を提供してくれる。
本記事では、そんな素敵なnagareの宿泊体験をお届けする。
築100年の古民家をリノベーション
nagareが位置しているのは、中央アルプスと南アルプスに囲まれた美しい田園風景が広がる場所。宿となっている建物は、築約100年の昔ながらの日本建築をリノベーションし、再利用したものだ。
オーナーご夫妻は、約500日間の世界一周旅行を終えてこの地にたどり着いたのだという。昔ながらの伝統を大切にすること、豊かな食と自然が身近な環境で暮らすこと、大切な人たちと居心地の良い空間で過ごすこと……。そんなオーナーご夫妻にとって人生で大切なものが詰まったこの場所で、訪れる人にも大切な時間が過ごせるように、細部にわたって工夫が凝らされている。
この宿に泊まることができるのは、1日1組のみ。それは、ほかの誰にも何にも邪魔されず、ただ大切な人とこの場所に流れるゆるやかな時間に身を委ね、特別なひとときを過ごせるようにとの配慮によるもの。
藍色に染まった暖簾をくぐって玄関を入ると、そこはまるで別世界のよう。向かって左側には、広々とした開放的なリビングが訪れる人を温かく迎え入れてくれる。ソファや薪ストーブといった個性的なインテリア、モダンな囲炉裏テーブル、照明器具の配置や角度、壁のデザインなど、どこもかしこも細部に至るまでオーナーのこだわりを感じる。それでいて肩肘を張った雰囲気は一切なく、どこまでもゆるやかに、穏やかに包み込んでくれるような癒しの空気が漂っているのだ。
リビングの奥には廊下に囲まれるように日本らしい畳の間がある。鴨居や欄間に使われている木材をよく見ると、この家を支えてきた長い年月がじんわりと感じられる。リビングと畳の間の脇には縁側があり、正面には芝生が敷かれた日当たりの良い広場。天気の良い日は縁側や芝生に寝そべって読書をしたり、うつらうつらと昼寝を楽しんだりできそうだ。そして、向かいにはかつての姿をそのままに残した土蔵が建っており、風情があってこれもまた良い。
畳の間を回るようにぐるりと廊下を奥まで進むと、寝室がある。寝室に入るとガラリと空気が変わり、どこか南国のリゾートのような雰囲気だ。木材の白い天井に真っ白な壁、洒落たドレッサーや照明と洋風の空間が広がっている。床や壁の下半分には木材が使用されており、自然の温もりも忘れない。無駄のない空間だから、寝心地の良さも抜群だ。
玄関の右側にあるキッチンは、昔ながらの土間キッチン。この空間はかつては馬小屋だったらしい。当時のままの土壁があえて残されており、古民家然とした趣が広がっている。そのうえ洋風の食器棚にチェアが備えられており、小洒落た雰囲気がなんとも言えない魅力を醸し出している。
そして、バスルームもこの宿のハイライトの一つ。洗練された洋風の洗面所を通って浴室のドアを開けると、中は檜材の壁が施された広々とした空間。バスタブのすぐ横には大きなガラス窓があり、中央アルプスのパノラマが望めるなんとも贅沢な造りになっているのだ。檜の香りに深い深呼吸をしながら大自然を眺めていると、日々の悩みや疲れも吹き飛んでいく。
食事はシェフのコース料理も可能
夕食は土間キッチンを使い、食材を持ち込んで自分たちで準備することができる。だが、ここだけの特別感を味わいたいなら、シェフによるコース料理を予約するのがおすすめ。ここでは近隣の農家から伊那谷の旬の食材を取り寄せ、豪華なディナーコースを堪能することができる。
コースを監修しているのは、伊那市で本格デリカテッセンを営むオーナーシェフ。地産地消の食材を知り尽くしたシェフが新鮮な野菜や川魚、時にはジビエを使ってもてなしてくれる特別な料理を囲炉裏で食べるのは、まさに極上の時間だ。
朝食は宿から食材のみ用意されており、セルフサービスとなっている。一飯一汁のバランスの取れたメニューとなっており、土鍋で炊くごはんも風情があって一興。
周辺の見どころ
nagareに宿泊したら、まずはこの宿の中に流れるゆったりとした時間を存分に味わって欲しいのだが、周辺には観光スポットもいくつか点在している。
自然をより身近に感じたいなら、千畳敷カールがおすすめ。約2万年前の氷河期に氷の浸食によってできた標高2500メートルの高山帯は、高山植物の宝庫として人気だ。夏は色とりどりの花、秋は黄金色の絨毯、冬は一面真っ白な雪景色と、四季折々の美しい景色を楽しめる。千畳敷カールへは路線バスとロープウェイを乗り継いで行く必要があり、路線バスの起点となる菅の台バスセンターまではnagareから車で20分。
絶景を堪能できるとnagareのオーナーから教えてもらったのが、車で30分ほどの所にある陣場形山山頂展望台。眼下には伊那谷の町と木曽山脈の美しい景色が望める。山の麓には「ベースキャンプコーヒー」という地元の人々に愛されるおしゃれなカフェもあり、里山のドライブを楽しみたい人におすすめ。
せっかく長野に来たのだから温泉に入りたい!ということなら、周辺に日帰り温泉がある。nagareの近場であれば、「こまくさの湯」や「清流苑」が車で20分前後でアクセスできる。
nagareへのアクセス
nagareは車でのアクセスが便利。東京方面からであれば駒ヶ根ICで降りて約15分、名古屋方面からであれば松川ICで降りて約20分でアクセスできる。電車で行く場合、最寄駅はJR飯田線田切駅となり、駅からは徒歩23分でアクセスが可能。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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