まるで日本昔ばなし! 福島の山間にある茅葺き屋根の町・大内宿

まるで日本昔ばなし! 福島の山間にある茅葺き屋根の町・大内宿

福島県南会津の山間を奥へ奥へと進んで行くと、突如として茅葺き屋根の民家が建ち並ぶ小さな村が出現する。ここは、江戸時代に会津城下と下野国(現在の栃木県日光市)を結ぶ街道の宿場町として整備された大内宿。かつては参勤交代や食料輸送のため、大名や商人が通る旅の要所として栄え、重要な役割を果たしていた。

明治以降は交通路が移行されたため、この地域は開発を免れた。そのおかげで現在も400年前と変わらない姿をそのまま残しているのだ。

見どころはみごとな茅葺き屋根

大内宿の見どころは、なんといってもそのみごとな茅葺き屋根。約500メートルにわたり整然と並ぶ美しい家並みは、まさに江戸時代にタイムスリップしたかのよう。30軒以上の茅葺き屋根の民家がここまできれいに残っているのは極めて珍しく、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。

今も変わらずにこの景観を見られるのは、地元民による手の行き届いた保存活動のおかげだ。茅葺き屋根は約20年に一度、葺き替え作業が行われる。茅手(かやて)と呼ばれる専門技術を持つ職人を中心に、村の人々が協力し合って作業に取り組むという。

材料にはススキが使われる。夏は涼しく冬は暖かい茅葺き屋根だが、火災が起きればすぐに火が広まってしまう。そのため、秋のはじめには一斉放水が行われる。こうして大切な村を守るため、親から子へと伝統の技術が受け継がれていくのだそうだ。

大内宿の楽しみ方

街道沿いには屋敷割りや本陣などが残っており、形を変えて観光客をおもてなししている。現在はほとんどの民家が、軒下で民芸品や食材を売るみやげ物店を営んでいる。会津塗の漆器や会津木綿、絵ろうそく、会津本郷焼といった伝統工芸品を売るお店をはじめ、起き上がり小法師やちりめん雑貨といった民芸品、漬物、お菓子……。会津を代表する特産品がそこかしこで売られているので、1軒1軒のぞきながら歩いてみよう。

大内宿に来たらぜひ味わってもらいたいのが、名物の「ねぎそば」。お蕎麦の上にネギが1本乗った見た目は、豪快でインパクト抜群。ネギを箸の代わりに使いながらお蕎麦を食べるというのがなんともおもしろい。ネギを少しずつ齧りながら食べると、新鮮なネギの辛みと出汁の旨みがマッチしておいしい。

食事処は大内宿に10カ所以上あり、ほとんどのお店でねぎそばが食べられる。江戸時代の建築の内部には昔ながらの囲炉裏があり、身も心もほっこりした気分になれるはず。ねぎそばのほかにも、半つきの白米を丸めて串に刺し、じゅうねん味噌で食べる「しんごろう」や、栃の実ともち米で作ったお餅「栃餅」、岩魚の塩焼きなど、さまざまな郷土料理が。店先で買って食べ歩きするのもおすすめ。

おなかがいっぱいになったら、運動も兼ねて街道の一番奥にある見晴台へ行ってみよう。階段を上った小高い丘の上は1番の撮影スポットで、大内宿の町全体を見下ろすことができる。

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冬の雪まつりも絶景!

春には桜、夏には生い茂る新緑、秋には赤く色づいた町並みと、四季折々の景観が見られる大内宿。なかでもぜひ一度訪れてもらいたいのが、雪まつりの時期だ。2月初旬の週末に2日間だけ開催される雪まつりでは、そば食い競争や歌謡ショーなどのイベントが盛りだくさん。

この時期になると茅葺き屋根には雪がこんもりと積もり、一面真っ白な世界にはまた違った美しさがある。町なかには雪まつりの期間だけ限定で雪灯籠や小さなかまくらが出現。夜になると灯籠に明かりが点り、ゆらゆらと揺れる光の粒が幻想的な空気を醸し出す。

地元の男性陣による御神火載火や、民家越しに打ち上がる花火もお見逃しなく。

会津をぐるっと一回りしよう

大内宿の周辺には観光スポットが多い。幕末の歴史を伝える鶴ヶ城や飯盛山が位置する会津若松、エメラルド色の湖が美しい裏磐梯、国の天然記念物に指定されている景勝地・塔のへつり。また、東山温泉や芦ノ牧温泉、湯野上温泉といった温泉地が夜には疲れを癒してくれるだろう。