COVID-19 LAでの外出禁止令中に思うこと
- 2020.04.08
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
世界的大流行(パンデミック)を引き起こしている新型コロナウィルス感染症。感染者数は今や世界全体で140万人を超し、日々7万人のペースで増え続けている。
今年の1月末頃から感染が広がり始めたここアメリカでは、当初感染者数は少なかった。世界の感染者数ランキングでは中国に続きイタリア、イランなどが上位に位置し、アメリカはかなり下のほうにいた。けれど感染者は徐々に増えていき、3月14日にトランプ大統領が国家非常事態を宣言。3月26日にはアメリカの感染者数はついに世界でトップに躍り出た。
そこからはもう、完全に独走状態だ。他国が追いつく隙も与えず、感染者数は日々驚くべきスピードで増え続けている。
ロサンゼルスでは3月初旬に初めてコロナ感染者の死者が出たため非常事態宣言が出され、同月20日に外出禁止令が出された。エッセンシャルビジネス以外の営業は停止、住民に対しては買い物やウォーキングを除き、不要不急の外出は禁止に。ウォーキングやジョギングのための外出はOKとしていたが、週末にはビーチやハイキングトレイルに人が殺到したので、怒ったロサンゼルス市長はすべてを閉鎖した。今やビーチ、公園、ハイキングトレイルなどの入口には「CLOSED」とでかでかと書かれている。
当初は1カ月後である4月19日までが外出禁止令の期限とされていたが、現時点で拡大は止まる様子を見せず、延長されることは間違いない。
ほんの数カ月前までは、ここまで深刻な事態になるとは誰も想像していなかっただろう。LAで外出禁止令が出る少し前に、「このままでは8週間以内にカリフォルニア州民の56%が感染する恐れがある」とカリフォルニア州知事が言っていた。その時は、いやいや大袈裟だろう、と思っていたが、あながち間違いではなかったと今は思う。
かくいう私は外出禁止令が出る1週間前にオフィスがクローズとなり、在宅ワークを始めて今日で3週間となる。
まずLA界隈で人々が異常に騒ぎ始めたのは、3月中旬に差し掛かった頃だ。ロサンゼルス市長が不要不急の外出は避けるようにとのアナウンスを出した瞬間、アメリカ人は1カ月分の食料備蓄のため買い占めを始めた。
食糧危機というわけでもないし、買い占める必要なんてないだろう、大袈裟なんだよ、と周囲の動きを小馬鹿にした私は世間の混乱には動じず、いつも通り週末に食料を買いにスーパーへ行った。
するとそこには信じられない光景が。スーパーの棚という棚から、商品が一切合切なくなっていたのだ。シリアルも肉類も乳製品も冷凍食品も缶詰も、何もかもが空っぽ。売るものがなくなった店員は、何もなくなった棚の掃除をしていた。まさかここまでの状況とは想像しておらず、あっけにとられた。
最初に訪れたスーパーでは欲しいものが手に入らなかったので、その後4、5店舗回ったが、どこも同じような状態だった。ロサンゼルス中のスーパーから一瞬にして商品が消えてしまったようだ。さらにTargetやWalmartといった百貨店では、トイレットペーパーやティッシュ、ワイパーなどの紙類を中心に棚が空っぽになっている。
私は住民のあまりに短絡的な行動に、憤りを覚えた。今回の問題はウィルス感染であって、食糧危機ではない。皆が通常通りに買い物をすれば何も問題はなかったはずだ。それなのに人々がこぞって過剰反応したせいで混乱が混乱を呼び、かえって状況を悪化させているではないか。まったくあほらしい。
幸いにも日系スーパーは消費者がほとんどアジア人に限られるため、商品はまだ豊富に残っていた。知る人ぞ知る穴場のような状態になっており、必要な食材を買うことができた。
ただし、どうにもこうにも困ったのはトイレットペーパーだ。我が家のトイレには、その時点で在庫があと3ロールしかなかった。しかし、どれだけたくさんのお店をはしごしてもトイレットペーパーだけはどこにも売っていない。大きな声では言えないが、仕方なく私はオフィスのトイレから5ロール拝借するという最終手段に出た。やってはいけないことと分かってはいたが、トイレ生活の危機が迫っている今、手段を選んではいられない。ただ、良心の呵責を感じた私は1ロールだけ残しておいた。
その後もトイレットペーパー探しの日々は続いたが、丸1カ月はどこのお店も在庫切れの状態が続いた。いや、定期的に仕入れてはいるようなのだが、入荷したその瞬間に売り切れてしまうのだ。入荷のタイミングを見計らって店内にいなければ、この争奪戦を勝ち上がることはできない。
ここでも私は憤りを隠しきれなかった。明らかにトイレットペーパーを買いすぎている人たちがいる。しかも少数ではない、大勢いるはずだ。この考え無しの人々のせいで、アウトオブストックになりそうな人が手に入れられずに困っている状況を心底理解してもらいたい。
幸いにも、私には中学生の頃にホームステイをさせてもらったホストファミリーがオハイオ州にいる。彼らとは今も連絡をとって定期的に会いにも行っており、良好な関係を築いている。もうだめだ、となったタイミングで彼らに相談したら、すぐさまトイレットペーパー24ロールを郵送してくれた。私の人生を救った恩人だ。
トイレットペーパーの入手は引き続き困難だが、食料がスーパーの棚から消えたのは一時的なもので、現在はどこのスーパーも元の水準にほぼ戻っている。ただし、今度は別の点で買い物のしづらさが出てきた。現在、Social Distancing(人との距離を1.8メートル空けること)が全米で義務付けられており、スーパーマーケットも入場制限をしている。エントランスの外では、1.8メートルおきに貼られた印に沿って入店待ちのために並び、レジでも同様に並ぶ。
つい先日、朝9時頃に日系スーパーに買い物に行った。するとオープン直後にもかかわらず、外には入店待ちの長蛇の列。建物に沿ってぐるりと裏手に回って最後尾に並び、入店までにかかった時間は20分だ。さらに、7カ所中3カ所しか開けられていないレジには40分並んだ。入店、品物選び、会計を合わせて、1時間半ほどかかった。買い物するのも一苦労だ。
外出禁止令が出てから2週間、あまり劇的な効果が見られないため、今後はスーパーの内部も一方通行にして自由に歩き回れないようにする、という話も出ている。もはや買い物に行く気も失せてしまう。
さて、話は変わるが、在宅ワークが始まった当初、私はこの状況に耐えられないと青ざめていた。そもそも自分の部屋で仕事をするなんて、集中できるはずがない。ベッドやソファ、本などの誘惑が多く、気が散って仕方がないのだ。そして、人とのコミュニケーションは格段に減った。もはやストレスしかなく、コロナウィルスに感染する前に食糧難と鬱で死んでしまう、と嘆いていた。
ところが人間とは不思議なもので、時間が経てば状況に慣れる。在宅勤務が始まって2週間も経つと、特にストレスも感じずに黙々と仕事に取り組んでいる自分がいた。家から出られない状況にはフラストレーションが溜まるが、在宅ワークに関してはもはや壁を乗り越え、恐れるものはもう何もないといった心境だ。
このご時世、外部とコミュニケーションを取る手段が充実しているというのも一つの要因と言える。最近は週1で会社の同僚の女の子たちとオンラインランチを開催し、お互いの顔を画面越しに見ながらたわいもない会話を楽しんでいる。さらに、いつものヨガ仲間とオンラインヨガを楽しんだり、LAや日本の友達とオンライントークを楽しんだりと工夫すればそんなに孤独を感じずに済むのだ。つくづく便利な世の中になったなと思う。
ただ、状況に慣れたとは言え、精神的に多少なりともストレスは受けているらしい。実はここ2週間ほど、よく眠れない夜が続いている。私はいつも11時〜11時半に床に就き、朝は7時に目覚ましをかける。通常であれば一度眠りに落ちると朝までぐっすり寝ているのだが、最近、夜中の2時頃に必ず一度目が覚める。二度寝しても、7時のアラームが鳴る前に目が覚めるのだ。
おまけに、必ず悪い夢を見る。起きてしばらく経つと夢の内容は忘れてしまうのだが、悪い夢だったことははっきりと覚えている。このことを話したら、友達に「体力が有り余ってるんだよ」と言われたが、私はやはり何かしらのストレスが引き起こしているものだろうと思っている。
また、この状況下、不安の種も少なからずある。現在、アメリカではビジネスの一時的閉鎖にともない、失業者が増え続けている。3月末の時点で1000万人以上が失業したそうだ。COVID-19によってアメリカ経済が受ける打撃は計り知れず、史上最悪の不況が訪れると予測する専門家もいる。
幸いにも私はまだ減給も解雇もされておらず、今まで通りに仕事をさせてもらっている。しかし今後の見通しが立たない今、いつ首を切られてもおかしくない状況だ。もちろんこれは私だけでなく、誰もが抱えている深刻な問題だろう。
今はただ、この状況を乗り切ることだけを考えて前向きに生きていくしかない。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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