アメリカで甲状腺の診察 〜英語の専門用語って難しい〜
- 2020.04.16
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
先日、甲状腺に腫瘍があることが発覚した。
ことの発端は3カ月ほど前だ。いつも通り何気なく洗面所で鏡を見ていたところ、ふと首元が気になった。首の右側が、やけに腫れていたのだ。
余談だが、私は高校生の頃、弓道部に所属していた。弓道をやったことがある人なら分かると思うが、弓を引く際は首から上は常に左を向いた状態で的の一点を見つめ、矢が手元を離れるまでの間ずっとその姿勢を保つ。その際、胸鎖乳突筋といわれる顎の両側から鎖骨にかけて縦に伸びる首の筋肉を使っているらしく、弓道をやっていると首の右側の胸鎖乳突筋が発達して首が太くなる。そのため、私は普通の人と比べて首の右側の筋肉が太いという自覚はあった。
だが、以上のことを考慮したうえで考えても、なんだか不自然に腫れているように見えた。首の付け根のあたりがぽっこり丸く膨らんでいるのである。腫れている部分を指先で触ってみたところ、明らかに筋肉ではなさそうだ。これはいよいよ怪しい。
ちょうど海外旅行保険の契約があと3カ月で切れるというタイミングだったので、その前に体に悪いところがあればすべて治しておこうと思い、クリニックに行くことにした。体の不調に関しては自分が100パーセント理解できるようにしておきたいので、日本人のドクターが診てくれるクリニックに決める。
ドクターに首の腫れについて相談すると、甲状腺が腫れているかもしれませんね、と言う。考えられる病状としていくつか病名を言われたが、そこで聞き覚えのあるものは「バセドー病」だけだった。私は、バセドー病ってあの芸能人とかががなるやつ?という程度の知識しか持ち合わせておらず、予想外の病名に驚きを隠せない。
その日は胃の調子も悪いという口実も付けて言ったので、とりあえず尿検査と血液検査、そして後日、甲状腺について調べるための超音波検査を受けた。
帰宅してからも私は「バセドー病」という言葉が頭から離れず、とにかくインターネットで調べてみることにした。すると、甲状腺の病気には主に3つあることが分かった。バセドー病、橋本病、そして腫瘍だ。詳しく内容を読んでみたが、バセドー病と橋本病に該当するような症状は現在見られない。とすると、腫瘍の可能性が一気に高まる。
医療について疎い私でも、腫瘍と聞いたら思いつくのは「がん」だ。まさかここでがんという言葉に直結するとは予想もしていなかったので、一気に不安が膨らんだ。悪性だったらどうしよう。親に話さないかんかな、などとオロオロし始めた。
2週間後、診断結果の報告を受けた。どうやら首の右側に大きいのが1つ、左側に小さいのが1つ、2つの甲状腺腫瘍があるらしい。ただし、私が診察を受けたクリニックは甲状腺専門のドクターはいないので、良性か悪性かまでは分からないという。血液検査の結果では悪いところは一切見られないので悪性の可能性は低いが、ここは専門のドクターに一度調べてもらったほうが良いという話になった。
その数週間後、紹介してもらった甲状腺専門のドクターの所へ診察に行った。ドクターはアメリカ人のため、会話はすべて英語になる。この時まで甲状腺を英語で「Thyroid」ということも知らなかった私は、とてもではないがこんな専門的な内容を英語で話されても理解できるはずがないと思い、当日は通訳を付けてもらうことにした。
ところがである。アポの日に病院に行くと、通訳はいなかった。都合が付かなかったようだ。こうなったら仕方ない。なんとか理解できるよう、最善を尽くすしかない。ドクターは私の不安を悟ってか、分かりやすいように説明してくれたのでおおかたは理解できた。甲状腺腫瘍は珍しくはないこと、腫瘍の大半は良性で、悪性である可能性は低いこと、詳しい検査をして悪性であれば手術をするが、成功率は高いことなどの説明を受けた。
まずは超音波検査を再度受け、専門家の目で見ていただく。超音波検査だけでは判断が難しいということになり、「バイオプシー(Biopsy)をしましょう」と言われた。 私はおもむろに「はい」と答えつつ、バイオプシーってなんなん?という疑問しかない。
ドクターが準備をするために診察室を出て行ったタイミングでスマホで調べてみると、「生検=生体組織検査」ということらしい。腫瘍から組織の一部を切り取って、検査をするということだ。なるほど、一つ英語を学んだ。
戻ってきたドクターが、Biopsyの手順を説明する。腫瘍に針を刺して組織の一部を採取し、それをラボに回して検査をするのだそうだ。いろんな角度から組織を採取するため、1つの腫瘍につき4〜5回針を刺すという。麻酔をするので痛みは感じないし、痕も残らないということで、ひと安心した。
ただ、もう一つ私には理解できない部分があった。ドクターによると、「針を刺して腫瘍からティシュー(Tissue) を取る」と言うのだ。「Tissue」? ここでお伝えしておくと、私の脳内辞書には「Tissue = ティッシュ」しかない。どう考えても、首からふぁさっとした白いちり紙を取り出す図しか想像できない。
ティシューが何を意味するのかどうにも気になって仕方ない私を歯牙にもかけず、Biopsyは淡々と進められた。ドクターが言う通り首に鈍い違和感を覚えるだけで痛みはほぼ感じず、10回ほど針を刺されて無事Biopsyは完了。1週間後に結果が出たら報告しますね、というやりとりを終えて病院を後にした。
病院を出てすぐさま気になっていた「Tissue」を調べてみると、生物学上の「組織」「細胞」という意味で使われるらしい。なるほど、白いちり紙のティッシュではないのか。首からティッシュが出てくるイメージが浮かんでいた自分がばかばかしくなる。医療専門の英語は、まったく未知の世界だ。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
-
前の記事
最近、トランプ大統領を見直している件について 2020.04.10
-
次の記事
LAでおすすめのおしゃれなカフェテリア9選 2020.06.04