移りゆく時代 〜ヘイ、グーグル〜
- 2020.12.24
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
時の流れというものは、図らずも世の中に変化をもたらす。
19世紀後半にトマス・エジソンが白熱電球を発明し、20世紀初頭にライト兄弟が有人動力飛行に成功した。そうやって少しずつ便利な世の中が発展してきた。
特にここ10〜20年間でテクノロジーは目覚ましい進化を遂げている。私がこどもの頃、家には黒電話があり、ダイヤルをジーコロジーコロ回して電話をかけていた。それがプッシュフォンになり家庭用ファックス機になり、携帯電話が登場し、今やスマートフォンだ。家に電話機を置く家庭も激減した。
小学生の頃には学校にテレビのような大きいデスクトップパソコンがあったが、今はリンゴ3個ほどの重さしかないノートパソコンが一家に1台は当たり前で、むしろ一人1台も普通になった。レコードで音楽を聴いていた時代はとっくに終わり、ラジカセ、CD、MDなどを経て今の主流はiTunesやSpotifyといったアプリでの購入やサブスクリプションサービスだ。
私が生きてきたたったの30年間だけを振り返ってみても、時代はかつてとはまったく異なるものになってしまった。
先日、知人の家に遊びに行った時に驚くべき光景を目撃した。知人には6歳のこどもがいる。その幼い少年が「ヘイ、グーグル」と、スマートスピーカーのGoogle Homeをいとも簡単に操作していたのである。私は衝撃を受けた。今時の若者にとってはこれが日常であり、なんら驚くべきことではないのだろう。しかし私が6歳の頃、このようなイカした機械など存在しなかった。まず、私が話しかけてそれに的確に答えてくれるような装置なんて夢のまた夢だったはずだ。インターネットにつなぐには有線コードが必要であり、当時はWi-FiはおろかBluetoothなどという便利な技術すら生まれていなかった時代である。
それが今は、3歳くらいのこども様が当然のようにスマートフォンをいじる世の中となった。
なんとも不思議な感覚だ。
時代の変化にともない、こどもの遊びや興味関心も変わっていく。
「こどもが選ぶ将来の夢ランキング」というものをたまに見かけるが、いまどきのこどもたちのドリームは、私がこどもの頃とはまったく違うらしい。ここ数年で急激に人気が出てきたのが「ユーチューバー」。ちなみに念のため言わせてもらうと、私がこどもの頃にはユーチューバーなどという職業は存在しなかった。Youtubeが存在しなかったのだから当然だが。
このユーチューバーという職業が、私にはどうも不思議でならない。そもそもユーチューバーとは職業なのか?と疑問に思ってしまう。だが答えはイエス。動画配信を通して報酬を得ている以上、れっきとした職業なのだ。要は個人事業主ということなのだろう。しかし、大きくなったらお花屋さんになるの、ケーキ屋さんになるの、看護婦さんになるの……と極めて現実的なドリームしか存在しなかった幼少時代を生きてきた私にとって、納得してはいるが何度考えても不思議なのだ。
時代が変われば世の中も変わる。
当然のことなのだが、かつて想像もしなかった光景に出くわすたびに驚きを隠せないのは、私だけではないだろう。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
-
前の記事
アメリカ先住民の村 ニューメキシコ州タオス・プエブロへ 2020.12.21
-
次の記事
プエブロ族のルーツ、チャコ・キャニオン 2020.12.27