アメリカでのプリウス盗難あるある
- 2020.12.18
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
先日、やられた。
マイカーのプリウスちゃんが、盗難被害に遭ったのである。
盗まれたのはCatalytic Converter(カタリティック・コンバータ)というパーツで、ガスの浄化装置。車の最下部のマフラー付近、すなわち普通なら人の手が届かない場所に搭載されているパイプのような形状のものだ。
実はここ数年、アメリカではこのプリウスのパーツの盗難件数が劇的に増えているらしい。なぜ狙われるのかというと、このパーツには高価な金属が使われており高く売れるのだそうだ。パーツの値段はおよそ2000ドル(日本円で約20万円)。ちなみにこのパーツはプリウスだけではなく、ほかの乗用車にも搭載されている。しかし、プリウスに使われているパーツはトヨタが品質にこだわっているため、より価値があるのだそうだ。
窃盗犯は、ほんの30センチ程度のこのパーツ部分だけを盗んでいく。ジャッキで少し車を持ち上げ、電動工具でパーツ部分をカットするらしい。
愛しのマイカーが3日前、この新たな犠牲者となった。
ことの成り行きはこうである。
その日、スーパーに食材を買いに行こうと家を出た私はマイカー・プリウスに乗り込み、パワースイッチをオンにした。サイドブレーキを解除しシフトレバーをドライブに入れ、さて、とアクセルを踏み込んだ瞬間。「ブゥオオオオオオオオオオッ」と、今まで聞いたことのないような爆音でエンジンを吹かし始めたのである。
驚いた私は一旦車のパワーをオフにし、首をひねる。どうしたんだろう。
プリウスちゃんの機嫌が悪いのだろうかと思いつつ、再度パワーをオンにして様子を見ると、先ほどと同じように爆音でエンジンを吹かし始めた。あまりの騒音に「この車爆発するんちゃうか」と焦り、急いでパワーをオフにして一度車の外に出る。
何かおかしいことがないか車の周りを歩きながら点検していると、外に出てきたご近所さんから声をかけられた。私はいつもストリートパーキング(路駐)しており、その駐車場所の目の前に住んでいる人が音を聞きつけて出てきたのだ。彼女の口から、とんでもない真実が告げられた。
「そのプリウス、Catalytic Converterが盗まれてるよ」
まず、その人生で初めて聞いた訳の分からない名称を聞き取れず、それから「盗み」という普段の生活とは無縁の言葉に私は戸惑った。えーと……?と返事に困っている私に、彼女はていねいに教えてくれた。
Catalytic Converterとは車の底辺に設置されたパーツであること。私の車が発する音と匂い(ガス漏れのような匂いがした)から推察するに、まず間違いなくCatalytic Converterが盗まれていること。プリウスのこのパーツが盗まれる事件が多発していること。かくいうご近所さんの親戚も、盗まれたことがあるらしい。どうやら彼女は親戚の窃盗現場に居合わせていたらしく、この音と匂いは記憶にあると説明してくれた。
初めての状況に頭がついて行かなかったが、彼女の話す内容に嘘はなさそうだった。どうやら、私の車はまんまと窃盗犯のターゲットにされたようだ。
途方に暮れつつ、とりあえず行きつけの修理屋に電話して状況を説明した。すぐに車を持って来いということだったので、レッカーを呼んで車を牽引し修理屋へと運び込んだ。
レッカー車の運転手も行きつけの修理屋のおっちゃんも、みんな口を揃えてご近所さんと同じことを言った。
「ああ。プリウスのこのパーツはね、盗まれるんだよね」
アメリカの “あるある” のように言う。
いやいや。そんな当たり前のように言われても知らんし。
修理屋で車を持ち上げてもらい下をのぞき込むと、Catalytic Converterがあったであろう場所は空っぽ。繋ぎめの部分はスパッときれいに切断されていた。
当事者の私は放心するしかなく、まさに「なんも言えねぇ」状態だった。
盗まれたパーツは当然、新しいものを入手しなければならない。その値段は2000ドル。フルカバーの保険に入っていれば保険で賄えるが、盗難プランに入っていなければ全額自己負担である。私は後者、すなわち全額自己負担組だった。しかも、取り換えてもまたいつ盗まれるやもしれない状況である。
もう、ため息しか出なかった。
さて、起こったことはもう仕方がない。問題はこれからのことである。
話を聞いたところ、対策はいくつかあることが分かった。
1.プロテクタをつける
どうやら、Catalytic Converterを盗まれないようにするプロテクタが売られているらしい。パーツの上に鉄のカバーをつけて、盗られないようにするのだそうだ。プロテクタは100〜300ドルくらいで、修理屋に頼めば設置してもらえる。これが一番手っ取り早く安心な方法だと思う。
2.フルカバーの保険に入る
万が一パーツを盗まれた時のために、保険もフルカバーにしておくこと。ただしフルカバーの保険は高いので、これはお財布との相談になるが。
3.ドライブレコーダーを設置する
車の前後にドライブレコーダーを設置しておけば、万が一の時に証拠を残せる。ただし、角度によっては盗難現場がレコーダーに映っていない可能性もある。「録画中」シールをガラスに貼っておけば、それだけでも防止効果が少しは上がるだろう。
私は上記のうち1と2を実行することにした。保険はフルカバーまではしていないが、盗難プランを追加することにした。
願わくば、これ以上盗難の犠牲者が増えんことを。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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