道案内が分かりやすいアメリカ、分かりづらい日本
- 2021.09.05
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
アメリカで目的地の場所を説明する時、その方法は日本とは異なる。
アメリカでは○○Avenueだったり○○Streetだったりと、大きな幹線道路から小さな路地までありとあらゆる道に名称が付いている。だから、施設や建物の位置を説明する際は基本的に通りの名称で説明する。たとえば、「○○通りと○○通りの角」というように建物がある場所を交差する通り名を伝えたり、「○○通り沿いで、○○通りと○○通りの間ら辺」というように、目的地が建っている通り名とともに、その場所を挟むように交差する左右の通り名を伝えたりする。
アメリカに住み始めてすぐの頃は、この説明方法にどうも慣れることができなかった。そもそも通りの名称を覚えられない。そうすると必然的に、いくら的確に場所を伝える表現であったとしても私にとってはまったく説明になっていないのと同然だった。なぜこんな分かりづらい説明をするのか、とさえ思っていた。
しかし、ある程度アメリカ生活に慣れてくると、これがすこぶる便利で有効的な説明方法だということが分かってきた。
まず、NYCのような公共交通機関が充実した町に住んでいない限り、日頃から車移動は必須だ。つまり、アメリカの総人口の大多数は車移動を強いられているのである。アメリカでは、交差点や角には必ず通りの名称を記した標識が建っている。また、ナビを使って運転していると「○○通りで右折」などと導かれるので、自然と通りの名称を目視で確認するようになる。こうして気づいた頃には最低限、自分の行動範囲内の通りの名称は暗記できているのである。
通りの名称を覚えるようになると、「○○通りと○○通りのそば」と説明された時も一瞬にして「ああ、あそこね」と理解できるようになる。そして、一度慣れてしまえば、この説明手段がもっとも明確に場所を伝える方法であることに気づく。
そうなると、今度は逆に日本の道案内の分かりづらさが浮き彫りになってくる。
まず、日本ではすべての通りに名称がついているわけではない。幹線道路のような主要な通りには名前がついていることが多いが、そこから派生する小道や裏道に一歩入ると名称のない通りだらけだ。目的地が大通りに面していたり、すぐ近くに目印となる建物があったりすれば説明もできるが、何も目印のない小道に沿った1軒を説明するには住所を教えてGoogleマップなどで位置を確認するしかない。
通りの名称がないことなんて大した実害はないと思われるかもしれないが、圧倒的に不便な点が一つある。それは車のナビだ。
慣れない場所に車を運転して行く場合、ナビを使う人は多い。アメリカとは違い、日本では大半の通りに名称が付いていないので、ナビの案内も「○○メートル先で右折」という曖昧な案内になる。交差点に名前が付いていれば交差点名で案内をしてもらえるが、そうでなければ距離で案内される。そうなると明確な目印がないので、え、ここでいいの?と混乱が生じる。自分が今いる場所が正しいかどうかを確認しようにも、通りに名前がないから確認できない。
アメリカの常識に慣れた身としては、頼むからもっと的確に案内してくれという不満が広がってしまうのである。
少し話はずれるが、東京オリンピックの開催が決定した頃から、日本の公共サインの英語表記が外国人にとって分かりづらいことが懸念され始めた。たとえば「国会正門前」という案内板が「Kokkaiseimonmae」と表記されていたり、「〇〇公園」が「○○Koen」と表記されていたり。これでは日本語読みをただアルファベット表記にしただけの意味不明な案内板だ。外国人にとっては“Kokkaiseimonmae”が具体的に何を示すのか、“Koen”が何なのかさっぱり分からないだろう。意味が分かるように伝えるのなら、“The National Diet Main Gate”や“○○Park” と表記すべきだ。
これらの案内サインはオリンピックに向けた対策によりだいぶ改善された。しかし、町なかを歩いていると、いまだに疑問を持つサインがあちこち残っていることに気づく。
先日見つけたのは、「江戸通り」の英語表記。パッと頭で考えて予想するのなら、Edo StreetやEdo Avenueだろう。しかし、日本語表記の下にあったのは「Edo-Dori Ave.」という表記。まず“Dori”は日本語なので、英語として意味が通じない。そして、“Dori”と“Ave.”は同じ意味なので、表現方法としては重複している。
交番の前を通るたびにも私は疑問を感じてしまう。交番の表示の上に「KOBAN」と書いてあるアレだ。外国人がKobanと言われても、何ら意味が分からないだろう。そこはせめて“Police”と表記すべきではないか。
そんなこんなで、日本の道路案内はまだまだ改善すべき余地がありそうだ、と何の権限もない一個人の私が一丁前にため息をついたりしている。
余談だが、「通り」の英語表現は実に多様だ。Street、Avenue、Boulevard、Drive、Road、Way、Laneなど、パッと思いつくだけでもこれだけある。それぞれの定義は道の規模によるところで使い分けているようだが、州や地域によっても定義は異なるようだ。興味があれば、ぜひ調べてみていただきたい。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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