日本国民の政治離れを見ているだけで良いのか

日本国民の政治離れを見ているだけで良いのか

アメリカに住んでいて日本と大きな違いを感じるものの一つに、国民の政治への関心度合いがある。

直近だと2020年11月3日にアメリカ大統領選挙が行われ、民主党と共和党との熱い戦いが繰り広げられたのは記憶に新しい。アメリカでは大統領選が近づくと、立候補者だけでなく国民までもが民主党派と共和党派とで激しくぶつかり合う。両者の衝突は深刻なトラブルに発展することも多く、夫婦や親族間で支持政党が分かれた場合は関係性に大きな亀裂が入るほどだ。それほどまでに、アメリカでは自分が支持する政党を声高に主張し、お互いに議論を繰り広げるのである。

日本はどうだろうか。日本では、自分がどの政党を支持しているかを公に話す人は少ないような気がする。支持政党が異なることで国民同士が激しくぶつかり合うことはほとんどないし、近年では投票率の低下、政治への無関心が嘆かれているほどだ。

アメリカで暮らしていくうちに、なぜ日本国民は政治に対してこんなに冷めているのかなんとなく分かるようになった気がする。私は別に評論家でも専門家でもなんでもない一庶民だが、日本とアメリカでの政治に対する熱量の違いについて、私なりの見解を書き留めておくことにした。

 

 

アメリカの政党は保守派であるDemocratic(共和党)とリベラルであるRepublican(民主党)の2大政党で構成されている。この2つの政党の方針はそれぞれまったく異なり、支持者層も異なる。違う政党なのだから当たり前の話なのだが、これが国民の行く末を大きく左右することになる。

アメリカは移民の国だ。世界各国から異なる人種、民族が集まった多民族国家であり、文化的背景や宗教観、伝統や習慣などがまったく異なる人々が生活している。だからこそ、経済的格差も大きくなりがちだ。そういった多種多様な背景を持つ人々をまとめていくうえで、何を重要視するかによってそれぞれの政党はまったく異なる方針を導き出している。

また、アメリカ合衆国という国は、1776年に独立してから約245年のまだ歴史の浅い新しい国だ。国としての土台はまだまだ建設途中といえる。さまざまな方向性から国の将来を見据えて、理想的な国家を築くために政策を打ち立てていかなければならない。

それぞれの政策や方針が異なるから、どちらの政党が勝つかによって世の中の方向性は大きく変わる。支持している政党が勝てば良いが、もし負けた場合は自分の生活が逼迫した危機に晒される可能性があるのである。選挙戦は国民一人ひとりの人生をも大きく揺らがす一大事なのだ。だからこそアメリカ国民は選挙戦を深刻に捉え、一人ひとりが本気で向き合う。自分自身の生活の安全を確保するために。

一方、日本は外国人移民が増えてきているとはいえ、総人口の約98%は日本人という圧倒的な単一民族国家。明治維新後、近代国家が始まってからは150年ほどしか経っていないが、単一民族で築き上げられてきた日本の歴史はアメリカよりも圧倒的に長く、国としての土台はとうに出来上がっている。

日本では国民をまとめることに関してアメリカほどの複雑性はないため、それぞれの政党の方針や政策はそんなに大きく変わらない。もちろん政党によって目指すところは異なるのだが、トップを握る政党によって国民の生活が危機に晒されるような深刻な事態に陥ることはほぼない。だから、国民は選挙という行事に対してアメリカほど切羽詰まった思いを持っていないのではないか。

どの政党がトップになっても大きく変わることはないから、国民の間で議論が白熱することもあまりない。

ただ、政治離れは別のところにあるような気もする。

新型コロナウイルスがこの世にはびこるようになり、日本の政策は世界と比較して遅れに遅れ、日本の悪いところが浮き彫りになった。どんどん新たな政策を打ち立ててスピーディに対応していくアメリカに比べ、とにかく稟議、稟議。話し合いが滞るのみで何も進まない日本。あいまいな言葉で切り上げようとする首相の会見やまったく進まないコロナ対策に業を煮やした人がほとんどだろう。

首相が交代しても、結局は何も変わらず無難な対応しかしない政府を見ていると、「この国、大丈夫か?」と日本の将来を危険視する人も増えたのではないか。

そろそろ古いしがらみを捨てて新しい風を入れていかないと、日本はこのまま悪い方向に進むばかりのような気がする。しかし、若い有力な政治家が出てきても変わらず古参の爺様たちが政治を牛耳り、新時代を握る若者へバトンを渡そうとしない。結局はこれまでの政府内外の関係性や利権、自分の立場ばかりを気にする政治家たちが政治生命を握りしめて離さず、何も変わらないのだ。

そんな日本の政府を諦めの目で見ている国民は多く、結果として政治への無関心や投票率の低下が進んでいるのではないだろうか。

だけど、そんなのは悲しい。

どんなに政府が頼りなくても、日本の未来に不安しか見えなくても、今生きているのは私たち自身なのだ。

国が頼りないなら、自分の生活は自分で守るしかない。

このまま日本が崩壊するのを見ているだけで良いのだろうか。
なんとかして変えたいなら、一人一人が動かなければならない。

自分一人が投票に行っただけではどうにもならなくても、一人ひとりの票が集まれば大きな力になり、国を変えることだってできる。

そういう気持ちで投票に出向く人が増えたら、何かが変わるんじゃないだろうか。

 

 

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