アメリカで運転中にまさかのガス欠になった
- 2021.12.06
- Life -アメリカ生活 日々のぼやき-
先日、まさかのガス欠で車が運転中に止まってしまった。
どちらかというと完璧主義、細部まで準備を怠らない私の人生でまさかガス欠を経験するとは、夢にも思っていなかった。けっこう几帳面な人間だと思っていたが、実はそうでもないのかもしれない。
ことの発端は、レンタカーでロードトリップをしていた時のこと。コロラド州デンバーの空港に降り立ち、そこからロッキーマウンテン国立公園まで運転して3泊ほどするという行程だった。
まず空港に着くとそのままレンタカー会社まで行き、チェックインの手続きをする。この日、私はコンパクトカーを予約していた。どこまで行くの?と聞かれたのでロッキーマウンテン近辺にある宿泊場所の町の名前を伝えると、手続きをしてくれていたスタッフが、そこに行くのなら山を登るからコンパクトカーだとパワーが心配だと言い出した。安くするからSUVで行ったほうが良いよという言葉にまんまと乗せられ、車種変更の手続きをした。
アメリカでレンタカーをする際、ガソリンは自分で満タンにしてから返却するか、それともお金を支払って空のまま返却するかを選択することができる。空のまま返却するとガスステーションに立ち寄る時間を省くことができ、返却後にレンタカー会社がガソリンを入れておいてくれるのだ。普段なら自分でガソリンを満タンにしてから返すのだが、今回の旅は予定が詰まっていたので空のまま返却するサービスを付けることにした。
さて、1日目の観光が無事終了し、宿に着いてひと段落した後で、ふと思い出してレンタカーの領収書を見てみた。ガソリンを空のままで返却するサービスを付けた場合、「Prepaid Fuel」のような項目で金額が表示される。要は、ガソリン代を先払いしているので満タンにせずに返却しますよ、という意味だ。このPrepaid Fuelという項目に書かれた90ドルという異様に高い金額が目に留まった。
90ドルは高すぎやしないか?SUVなのでタンクの容量が大きいとしても、普通に自分でガソリンを入れれば50〜60ドルくらいが妥当なのではないだろうか。
やたら高い金額を取られたことを心底悔しく感じた私は、車を返却する時はできる限りメーターがゼロに近い状態で返そうと心に固く決意した。
旅行は順調に進み、最終日。
この段階でまだ1度もガソリンを入れていなかった。
ここまで何とか持ち堪えてきたが、さすがにデンバーに戻るほどのガソリンはもう残っていなさそうだ。どこかでガソリンを補給しなければならない。それも満タンにするのではなく、必要と思われる最小限のガソリンだけ補給してできる限りガソリンをすべて使い切って返却してやるんだ。私の心の中はそんな野心でいっぱいだった。
途中で見つけたガスステーションで予定通り少しだけガソリンを補給し、デンバー空港付近のレンタカー会社へと向かう。帰りのフライトは午後4時頃だから、2時に車を返却してシャトルバスで空港へ行けば余裕で間に合う。という予定だった。
2時間ほどの運転を経てデンバーの中心街へと入り、レンタカー会社まではあと10分くらいという頃。
大通りを運転していると、急に車が「プスンプスン……」という間抜けな音とともに、みるみる減速していくではないか。どんなにアクセルを踏み込んでも、もはや加速するような勢いは一切見せない。
あ、やっちまった。
最初に思ったのは、シンプルなこのひと言。
一応、頭の片隅に一握りの冷静さが残っていた私は、みるみる減速する車を何とか路肩に寄せた。危機一髪、路肩に寄せて10秒後くらいに車は完全に停止し動かなくなった。
とりあえず一度、車のパワーをオフにする。10秒ほど放心した後、恐るおそるパワーをオンにしてみたが、空回っているだけでエンジンはかからない。これを何度か繰り返して本当にエンジンがかからないことに納得したところで、一気に冷や汗が出てきた。
やばいやばい。どうしよう、とりあえずレンタカー会社に電話するか? それとも保険会社? うわー、どうしようフライト間に合うかな、レンタカー会社はもうすぐそこなのに、電話して呼んだらすぐレッカー車で来てくれるかな、などと頭の中をぐるぐるぐるぐるいろいろな考えがよぎっていく。
とにかく、まずはレンタカー会社に電話して指示を仰ぐことにした。
ところが、こんな時に限ってオフィスに人がいないのか、何度電話しても誰も出ない。ほかの店舗に電話してデンバーの電話につなげてもらうようお願いしたが、転送してもらっても結局誰も電話に出ない。そんなことを30〜40分ほど繰り返してさすがにこちらもイライラしてきたところ、やっと一人のスタッフが電話に出た。
「2時に返却する予定だった者だけど」と話し始めると、「もう時間過ぎてるよ」とひと言。いやだから30分前からずっと電話してんのにそっちが出なかったんだろうが、と叫びたくなるのを堪え、ことの経緯を説明して指示を仰いだ。レンタカー会社からの反応は、保険にはガス欠のカバーは含まれていないから自分で何とかしてくれ、という何とも冷徹な回答。いや分からん、どうすれば良いのか教えてと粘ると、Uberを使って自分でガソリンを調達しに行って補給するか、レッカー車を呼んで引っ張ってレンタカー会社まで持ってくるか、どちらかしかないよと言う。AAA(アメリカのロードサービス)に入っていることを伝えると、まずはそこに電話してみろと言って電話を切られた。
少し冷静になった私は、さっそくAAAに電話する。電話口に出たのは先ほどの無愛想なレンタカー会社とは打って変わり、優しそうな年配女性の声だった。事情を説明すると、ガス欠で止まっているのならレッカーを手配する必要はないから、ガソリンを積んだスタッフを現場に向かわせるよ、と言う。ガスを補給すれば再び車は動くからそれで良いよね?と優しい声で説明する。スタッフのデリバリー費用は会員プランで賄えるから、ガソリン代だけを実費で支払えばOKだという。
さっそくデリバリーを手配してもらい、何分くらいで着く?と聞くと、「早くて1時間、もっとかかる可能性もある」という予想外の答えが返ってきた。1時間ではフライトに間に合わない。しかし、いずれにせよここから動けなければ立ち往生だ。これはもう、航空券を手配し直すしかない。私は腹を括った。
結局、待つこと2時間でやっとデリバリーが到着。無事にガソリンをゲットし、恐るおそる車のパワーをオンにしてみると元気よくエンジンがかかった。デリバリーの男性にお礼を言い、予定より2時間半も遅れてレンタカー会社に車を返却したのである。
ちなみにフライトチケットは当日変更ができず、250ドルで新しいチケットを取り直した。通常なら片道60ドルくらいのフライトである。Prepaid Fuelをケチったがために、手痛い出費となってしまった。
セコいことをすると、災いが自分に返ってくる。
今回の事件で学んだ教訓である。
なお、アメリカでガス欠になってしまった場合、対処方法はいくつかある。
1.家族や友人にガソリンを持ってきてもらう
これができる状況なら1番おすすめ。誰かに電話してガソリンを持ってきてもらい補給すれば、車はすぐに動き出す。
2.1番近いガスステーションでガソリンを調達する
Uberを呼んでガスステーションまで行き、自分でガソリンを調達するパターン。Google Mapなどで1番近くのガスステーションを探して行けば、そんなに大変なことはない。ただし、ガソリンを運ぶための容器と車に補給する時に使うじょうご(液体をこぼさず流し入れるための先が細くなってるやつ)が必要だ。ガスステーションで手に入れるか、事前にホームセンターなどに寄って手に入れる必要がある。
3.AAAか保険会社に連絡する
1も2もできない状況や自分で解決するのが不安な場合は、AAAまたは保険会社に連絡すると良い。今回のようにガソリンを運んできてくれるケースもあれば、ガソリンスタンドまで車を牽引してくれるケースなど、解決方法を先方が提示してくれるので言われた通りにすればどうにかなる。
まあいずれにせよ、常にガソリンを十分補給しておくことがベスト・オブ・ベストだろうが。
旅行雑誌、情報誌のフリー編集者兼ライター・フォトグラファー。人種や文化の違いに興味があり、世界中の国々を旅行しては、その地で見た美しい風景や人々、おもしろいと感じたものを写真に収める。世界遺産検定1級所持。
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