アメリカ先住民の村 ニューメキシコ州タオス・プエブロへ

アメリカ先住民の村 ニューメキシコ州タオス・プエブロへ

– Photo by New Mexico Tourism Department

アメリカ最古といわれる美しい町サンタフェから、車で1時間半ほど北へ行ったところに位置するタオス・プエブロ。ここは、1000年以上前から先住民のプエブロ人たちが生活を築いてきた集落だ。現在は150人ほどと少人数ながら、昔と変わらない伝統的な生活が続けられているタオス・プエブロの魅力に迫る。

アメリカ最古の住居

タオス・プエブロの集落にある住居建築は、紀元後1000〜1400年の間に造られたと考えられている。建築はすべてアドビ様式。アドビ様式とは、土と藁、水を混ぜて型に入れ、日干しして固めた赤茶色のレンガを積み重ねてできた建築だ。現在も残っている住居建築でもっとも古いものは1400年前後に建てられたもので、現役で使われているアメリカ最古の家といわれている。

興味深いのが、その建築物の構成。外から見ると、まるで5階建のアパートのような集合住宅に見える。しかし実際には1つ1つの隣り合う家が層のように重なっているだけで、独立した個人住宅の集合体なのだ。家族が増えるたびに住居スペースを拡張していく。内部ドアで住宅同士が繋がっていたり、行き来できるようになっているわけではない。現在はドアや窓が設置されているが、かつてはそういったものはなく、住居の天井に開いた穴から出入りしていたと考えられている。ほかの部族による攻撃から守るための構造だったようだ。

建物の壁は外側が泥で分厚く塗り固められている。そのため、気温差の激しいこの土地で昼間は太陽光の熱を吸収し、夜はその熱を放射することで快適な環境を保つことができる。また、室内となる内側の壁は清潔さと明るさを保つために白土でていねいにコーティングされている。驚くべき機能性とデザイン性を兼ね備えた建築物なのだ。

かつての文明を示す貴重な場として、地域の文化的発展やコミュニティ形成における重要な段階を示す証拠として、タオス・プエブロは1992年に世界文化遺産に登録された。

タオス・プエブロの見どころ

集落は複数の階層を持つ住居建築と、地下に7つあるキバと呼ばれる儀式のための部屋、4つの貝塚、教会建築などから構成されている。特に歴史あるエリアとして集落は塀で囲まれており、塀の内側では今も150人ほどが電気も水道も使わない伝統的な暮らしを営んでいる。また、塀の外側では現代の暮らしを営むプエブロ人もおり、現在この地に住む住民は全体で1900人ほどだそう。

集落には入場料を払うことで入ることができ、一部住居は内部が公開されている。プエブロ人たちのありのままの生活を見られるなんて、なかなかないことだ。先祖代々の慣習やしきたりを脈々と受け継ぎ、守り続ける彼らのスタイルには神聖さをも感じる。ちなみに、昔はドアも窓もなかった住居だが、現在はカラフルなドアが取り付けられており、普通の家と同じように出入りできるようになっている。集落を散策していると、まるで何世紀も昔にタイムスリップしたかのような気分を味わえるはず。

タオス・プエブロの見どころの一つとなっているのが、サンジェロニモ教会。当初の教会建築はアメリカ軍とメキシコ軍による領土をめぐる戦いで1847年に破壊されてしまい、現在の建物は1850年に再建されたもの。エントランスの門と教会建築の一部が真っ白に塗られており、青い空とのコントラストはひときわ目を引く。内部にはマリア像やステンドグラスもあるのだそう。

ちなみに、1619年に建てられた元の教会は集落の西側にあった。1680年に起きた反乱で教会は崩壊したが、そのすぐ後に同じ場所に教会が再建されたそうだ。現在この場所は廃墟として残されている。16世紀にメキシコの地へ進出したスペイン人はアメリカにも勢力を伸ばし、先住民をカトリックへと改宗させていった。そのため、この地に住むプエブロ人たちのほとんどが現在もカトリックの信者なのだそう。

おみやげやグルメもお見逃しなく!

集落の周辺では、ドリームキャッチャーや焼き物の壺など先住民が作った工芸品が売られおり、おみやげにおすすめ。また、ここで買えるかまどで焼いたパンがとてもおいしいという噂なので、ぜひ試してみて。

今も変わらずプエブロ人が伝統的な暮らしを守り続ける、生きた遺産を見に行ってみてはいかが?