アートと自然と伝統と。小豆島の魅力

アートと自然と伝統と。小豆島の魅力

岡山と香川に挟まれた瀬戸内海に浮かぶ、牛のような形をした小豆島(しょうどしま)。美しい海と山に育まれたこの島には、自然が織りなす景勝地や昔ながらの家並みが広がり、のどかな風景と独自の文化が自慢だ。その美しさと魅力から、映画のロケ地としてもたびたび使用されている。

最近ではこの地の特産物や伝統文化と融合したアート作品も多く設置され、3年に一度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の会場のひとつにもなっている。そんな魅力多き小豆島とはどんな島なのか、おすすめスポットとともに紹介する。

 

 

「迷路のまち」へ迷い込んでみて

かつて海賊が瀬戸内海エリアで海上勢力をあげていた時代、海賊から島民の生活を守るため、そして海から吹く強い風から建物を守るために、複雑に入り組んだ路地で町並みが形成されたという。この路地は今も残っており、いつしか「迷路のまち」と呼ばれるようになった。

昔ながらの家々の間をくねくねと伸びる小道。見上げれば青い空が広がり、なんとものどかで心安らぐひと時を過ごせるだろう。少し海抜の高い丘の方へ上って振り返れば、背後には瓦屋根の向こうにキラキラと陽光を反射する海が見え、ここが小さな島なのだと思い出す。

 

小豆島八十八ヶ所でお遍路の旅

四国には八十八ヶ所霊場があることがよく知られているが、実はここ小豆島にも八十八の霊場がある。弘法大師(空海)が、故郷である讃岐(現・香川県)と当時の朝廷があった京都を行き来していた際に小豆島に立ち寄り、修行や祈念をした寺院で構成されている。

四国霊場と異なるのは、山谷や自然の地形を利用した「山岳寺院」が多数あること。また全国にある霊場のなかで唯一、八十八ヶ所すべて弘法大師が開いた真言宗の寺院だそうだ。ここには今も、願い事を叶えようと多くのお遍路さんが訪れるという。

 

恋人に人気の「エンジェルロード」

小豆島の西部、土庄(とのしょう)港のほど近くにある「エンジェルロード」は、大余(おおよ)島へと続く砂州。潮の満ち引きによって道が現れたり消えたりするため、その様子が天使の散歩道みたいだということでこの名が付いたという。1日2回の干潮時には大余島までの道が現れ、「大切な人と手をつないで渡ると願いが叶う」というロマンチックな言い伝えがあることからカップルに人気だ。

 

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「小豆島オリーブ園」で名物を堪能

小豆島はオリーブの名産地。ここでは100年ほど前からオリーブの栽培を続けており、日本におけるオリーブの栽培はこの地で始まったといわれている。園内にはオリーブの木が鮮やかな緑で一帯を染めるオリーブ畑が広がる。

園内のオリーブ畑には通路が設けられており、発祥地の記念碑や丘、日本最古とされるオリーブの原木などを歩いて見て回ることができる。またオリーブオイルを作る体験スペース、オリーブを使った食品や美容品などを販売するショップ、オリーブ料理を楽しめるレストランなどの施設も。有名な彫刻家、イサム・ノグチの彫刻作品が置かれた遊具スペースなどもあり、大人もこどもも楽しめる施設だ。

 

映画のロケセットを活用した「二十四の瞳映画村」

昭和62年(1987)に上映された映画『二十四の瞳』のロケで使われた、オープンセットを改築したテーマパーク。海に面した丘に建つ苗羽小学校田浦分校には昔懐かしい木造校舎に小さな机と椅子が並び、まるで当時のままに時間が止まってしまったかのよう。ここを訪れれば誰しも、こどもの頃の懐かしい思い出が脳裏に蘇ることだろう。校内には撮影当時を再現した小道具なども置いてある。

そのほか原作者である壺井栄の生原稿や出版物などを展示した文学館や、『二十四の瞳』を随時上映しているレトロな映画館「松竹座」、佃煮や焼き物などが入った弁当や学校給食セットなどが味わえる食事処などの施設が村内に点在。小豆島のみやげ物が買えるショップも何軒かあるので、おみやげ探しにもいかが。

 

自然が織りなす渓谷美・寒霞渓

島の中心付近に位置する寒霞渓(かんかけい)は、約1300万年前の火山活動によって岩石が長い年月をかけて侵食され、奇岩怪石を作り出した景勝地。そそり立つ岩山やなだらかな曲線を描く渓谷などの美しい景色は、大分県の耶馬渓(やばけい)、群馬県の妙義山(みょうぎさん)と並び「日本三大渓谷美」に数えられるほど。

ロープウェイで山頂まで上ると、瀬戸内海に囲まれた島を見渡すことができる。春は桜でピンクに、秋は紅葉で赤や黄色に染まる一帯の絶景は一見の価値あり。山頂からは登山道コースがいくつか出ており、珍しい動植物に会えることも。

 

想像力を刺激する現代アートめぐり

「瀬戸内国際芸術祭」の会場のひとつにもなっている小豆島には、あちこちにユニークな現代アート作品が設置されている。芸術祭が開催されるたびに作品は増えており、何度訪れても新鮮な目で楽しめるのが魅力だ。

コシノジュンコやヤノベケンジといった有名な現代アーティストをはじめ、韓国のアーティストや設計事務所、大学の有志などが趣向を凝らした作品を展示。小豆島を象徴するものをモチーフにした作品もあれば、「これはなんだろう?」と想像力を刺激しながら楽しめる作品も。港で人々を出迎えるように設置されているものや町中に突如現れる作品、民家の陰にひっそりと佇むものなど、アート探しに明け暮れて1日が終わってしまうかも。

 

ほかにも古くから続く醤油蔵やこの地に湧く温泉、美しい棚田が広がる千枚田など、この小さな島にはまだまだたくさんの見どころが詰まっている。のどかな田園風景とモダンな景色が織りなす独特の町並みを、体感してみてはいかが。